ナンバーファイブ。 第一章

5年という年月はわたしが思ったよりも深く、長いものだった。

このつらさは2年前からわかっていたものだったのに、本当はわかっていなかった事を今痛感している。そう、2年前。もうすでにわたしと彼との関係が終わってしまうことを知っていた。こんな付き合いってあるのだろうか。デッドラインがある関係。2年とは短くて長い。彼は写真が好きだから、いつでもどこに行くにも大好きなカメラを持ち歩く。自分は記憶力がないからとはにかみながら笑う彼はとても愛らしい。恥ずかしがるわたしを見て、君はかわいいよっていつも言ってくれた。付き合い始めた時は会話が続かなくて、自分の言いたい事がなかなか言えなくて、随分喧嘩もしたなと今振り返る。そんな色々な時間を過ごしたわたしが彼のレンズをとおしておさめられている毎年彼が記念に一年に一冊、それをわたしにプレゼントしてくれていた。彼から見るわたしは、自分が自分を見るものとは何かが違っていた。不思議と愛情がその一ショット一ショットには優しく含まれている気がするのだ。日本に帰国したばかりのわたしはそれを懐かしむように一ページずつめくっていく。あー、あんな時あったなぁ。と思わず微笑んでしまうたくさんの写真には、いつも笑顔があり、わたしへ注がれる彼の眼差しがあり、そしてわたしもまた、彼へ笑い返している姿があった。もうこれ以上の写真はとられることがなく、そしてそれ以上の記憶も重なることはない。もう戻れない。もう造り上げることができない二人の関係。それはあまりにも遠く、あまりにも切ない。

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